この記事を読むのに必要な時間は約 5 分です。
みんなが大好きな肉料理。
今回は肉の美味さを科学的に説明していきます。
この記事を読むことで、
なぜ冷凍された肉は味が落ちるのかなどを理論として説明できるようになります。
肉の組織はこうなってる
本題に入る前に筋肉の構造について調べてみます。
最初は退屈な話になりますが少しお付き合いください。
【肉の組織】
小さい組織から順番に組み立てていくと、
細胞→筋繊維→筋周膜→筋内膜→筋外膜で構成されます。
【細胞】
細胞は細胞膜に覆われていて、水分(70~80%)、タンパク質、脂質、炭水化物、有機化合物、無機化合物から構成されています。
【筋繊維】
あまり運動していない筋肉の筋繊維は細く柔らかい状態です(キメが細かい)
代表的なのは、ヒレとかロースとかで高級肉として扱われます。
特に日本人の場合、柔らかい肉イコールいい肉として評価が高まる傾向があります。
逆に、よく動かしている筋肉は筋繊維が太く強靭(固く)になります(キメが粗い)
こちらの代表格はネック(首)やスネ(足)とかで、そのまま焼くと硬くて食べられないのでシチューなどに使われます。
【筋(周・内・外)膜】
これらは筋繊維の表面にあって、筋繊維を保護する役目をしています。
当然のことながら、よく運動する筋肉をとりまく膜(スジ)は太く、いり組んだものになっています。肉が硬いという場合、肉質そのものが硬い場合と筋があって硬い場合の2種類があります。
肉のうま味とは何なのか?
上述しましたが、細胞は細胞膜に覆われており、中には水分(70~80%)、タンパク質、脂質、炭水化物、有機化合物、無機化合物から構成されています。
肉のうま味は、この細胞内の水分に含まれる「うまみ成分」、「エキス分」、「脂肪分」などから構成されます。
スーパーなどで時間の経った肉で血が抜けてるのがありますよね。
この肉汁の流出(ドリップ)は、肉のうま味(を含んだ水分)が出てしまっている状態です。
当たり前ですが、味が落ちてしまっています。
肉を管理するには、時間、温度、塩分、乾燥に注意し、できるだけこの肉汁(水分)を逃がさないようにすることが大切なのです。
【塩について】
塩は調味料として絶大な効果がありますが、高い浸透圧をもっているので、肉から中の旨み(水分)を引っ張り出してしまいます。
塩味の肉を提供するときは、直前にかけるのが基本です。
野菜の塩もみなどは、これを逆手にとって中の水分を外に出すために行います。
肉を冷凍するとなぜ味が落ちるのか
チルドの肉を冷凍させるとなぜ味が落ちるのでしょうか?
肉は冷凍すると、細胞壁が非常に弱くなり解凍した時に肉汁が出やすい状態になります。
さらに、水分が凝固(氷になる)する時に結晶を作って膨らむんで、細胞壁を破壊してしまいます。
参考:https://www.suntory.co.jp/eco/teigen/jiten/science/01/
水が氷になるときに体積が膨らむのは皆さんも経験から分かりますよね。
冷凍するってのは細胞の中にある水分が凍ってしまうんで、もともと弱くなっている細胞膜を破壊してドリップ(うま味)が出やすい状態になってしまいます。
特に、緩やかに冷凍(緩慢冷凍)すると、肉の中の水分の結晶化がゆっくり行われるので、氷となる結晶がさらに大きくなります。
緩慢冷凍された肉を解凍すると、この大きな氷の結晶が解けて、その結晶部分が空洞となりますので、急速冷凍したときに比べて非常に肉汁(うま味)が流出しやすくなります。
肉を冷凍する際はなるべく短時間で行うことが大切です。
肉は冷凍状態にあっても脂質(うま味の元)やタンパク質の酸化が進みますので、風味がおちます。
冷凍する際には、肉が空気に触れないように密閉することが大切です。
特にフリーザーなどは、庫内が非常に乾燥していて水分(うま味)が蒸発しやすい状態になっています。
肉を冷凍するときは乾燥しないようにラップなどでしっかり包まないと、肉汁のうま味も水分ともに蒸発してしまいます。
肉の解凍方法について
肉の解凍方法には大きく分けて4種類の方法があります。
①自然解凍(冷蔵庫解凍)
冷蔵庫の中で時間をかけて解凍する方法です。
メリットは、冷凍された肉の外側と中心部の温度差が少ない状態で解凍されていくことで、肉汁(うま味)の流出を少なくできます。
デメリットは、時間がかかるので、すぐに調理する必要がある場合などの対応が難しいです。
②流水解凍(氷水解凍)
ボールなどの容器に氷水をはり、その中へ水に濡れないように密閉した状態の肉を入れ解凍します。
メリットは自然解凍に比べて、早い時間で解凍できます。
デメリットは、自然解凍に比べると肉汁の流出が多くなります。
③強制解凍(常温解凍)
そのまま常温で解凍する方法です。
メリットは時間が早いこと。
デメリットはその他のすべてが当てはまります。
肉汁は大量に出ますし、表面と中心部分で肉の温度差が大きくなります。
また、細菌の繁殖が著しく、衛生面でも問題が多々ありますので止めたほうがいいです。
④電子レンジ解凍
電子レンジを使って解凍する方法です。
メリットは時間がかからず便利なこと。
デメリットは熱で身が変色したり、びちょびちょになってしまったり、肉に火が入りすぎて縮んでしまって固くなったりします。
肉を解凍する際は冷凍する場合とは逆に、なるべく時間をかけて細胞膜を壊さないようにすることがポイントです。
おまけ 熱伝導率について
解凍方法で自然解凍と流水解凍を説明したので、ついでに熱伝導について簡単にまとめてみます。
上述した自然解凍と流水解凍の解凍時間の違いは、空気と液体の熱伝導率の違いによるものが大きいです。
熱伝導率とは
温度の異なる物質を接触させると、お互いの間で熱の移動が生じますが、熱伝導率とはその熱の伝えやすさのことを表します。
基本的には固体>液体>気体の順番で熱が伝わりやすくなります。
参考として、銀は428、アルミニウム236、水0.582、空気0.024
例えば、人間は80℃の熱湯には入れませんが、90℃のサウナに入っても平気なのは、この熱伝導率が関係しているためです。
読み返すと、理科の授業のようになってしまいました(笑)
皆さんにとって、これらは全て日常の中での経験から理解していることと思います。
でも、なんでそうなるのかを学んで、理論的な根拠をもって説明することができれば、より説得力をもって相手に伝えることが出来るのではないでしょうか?
最後までお読みいただきありがとうございました。