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*この記事は2020年2月に更新されています。


















損益分岐点の意味を理解している人は多いと思います。
しかし、「実際に活用している人はほとんど居ないのでは・・・?」と感じます。
あなたのもっている知識を、知識として埋もれさせておくだけではもったいありません。
今回の記事を読むことで、①変動費と固定費の違いを理解し、②損益分岐点が何かを説明できるようになり、③実際に使える武器として身につけてもらえたらと思います。



損益分岐点(売上高)とは
損益分岐点とは何か?
それ以上に売上が上がれば利益が出るし、それ以下の売上になれば赤字になる売上高のことです。
いわゆる売上と経費がトントン(黒字と赤字の分かれ目になる売上高)となる売上高のことです。
英語では「BEP」Break Even Point ブレーク・イーブン・ポイントと言います。
お店を新規開業したり、安定運営を目指す以上はお店が黒字にならないと話が始まりません。
自店舗の損益分岐点売上高(いくら売れれば利益がでるのか)がいくらなのかを良く理解しておく必要があります。
もちろん黒字ギリギリでは資金繰りが回らない危険性がありますので、損益分岐点売上高を出したうえで、目標の売上高を組み立てていきます。
また、損益分岐点売上高を自店舗の見込み客単価で割れば、何人お客さまが来店すればいいのかも分かります。
固定費とは














固定費とは何か?
家賃・地代・社員給与・減価償却費・金利負担など売上高の大小にかかわらず発生する費用のことです。
ほぼオープンの初期条件で決まるんで、店長の努力では動かせないコストです。
家賃などの固定費がやたら高い立地の場合、外から見ると繁盛店に思えても赤字経営になっていることも考えられます。
利益を出すためのポイントの一つは、いかに固定費を抑えて出店するかです。
変動費とは








変動費とは何か?
材料費・パートアルバイト給与など、売上に応じて変動する費用のことです。
店長の管理努力や管理能力で下げることができるコストです。
マネージャーが利益を出すためには、変動費をコントロールしていくことが重要です。
損益分岐点(売上高)の求め方






= 固定費 ÷(1-変動費÷売上高)①
= 固定費 ÷(1-変動費率)②
= 固定費 ÷ 限界利益率 ③
②の公式を覚えておくことをオススメします。
損益分岐点売上高を求めるのは難しくありません。
経費を固定費と変動費に仕分けすることさえ理解できれば、後は計算式に当てはめるだけです。
限界利益とは








限界利益は、売上高から変動費を差し引いた利益のことです。
限界利益 = 売上高 - 変動費






限界利益とは・・・
お客さまが一人増えるごとにいくらの利益になるか・・・と理解してください。
例題
客単価が1,000円、変動費が750円としたときの限界利益はいくらになるでしょうか。
また、限界利益率は何パーセントでしょうか。
解答
お客さまが一人来店するごとに、客単価が1,000円なので売上が1,000円となります。
限界利益 = 売上 - 変動費
= 1,000円 - 750円
=250円
限界利益率 = (1 - 変動費率)
= 1 -(750円 ÷ 1,000円)
= 1 - 0.75
=0.25(25%)
例題のケースだと、お客さまが一人来店するごとに250円の限界利益が積みあがっていきます。
この積みあがった金額が物件費などの固定費を超える額が損益分岐点売上高です。
損益分岐点客数の求め方
損益分岐点を客数を軸に考えて算出する方法です。
例題
固定費が1,000,000円、お客さま一人あたりの限界利益を250円としたときの損益分岐点客数は何人になるでしょうか。
解答
損益分岐点客数
= 1,000,000円 ÷ 250円
= 4,000人
損益分岐点比率とは
損益分岐点売上高はあくまでプラマイ・ゼロ(ギリギリ)の話なので経営としては非常に厳しい状態です。
そこで損益分岐点売上高と比較して実際の売上高がどれくらい上回っているかという視点が大切になってきます。
その実際の売上高が損益分岐点売上高をどれくらい上回っているかを見る指標として「損益分岐点比率」があります。
練習問題
居酒屋D店の月商は平均して1,050万円です。
この居酒屋D店の損益分岐点売上高が920万円としたときの損益分岐点比率はいくらになるかを求めなさい。
また、D店は売上が何%落ちると赤字になるかも合わせて求めてください。
解答
損益分岐点比率
= 920万円 ÷ 1,050万円 × 100(%)
≒ 87.62%
赤字になるライン = 100% - 87.62%
= 12.38%
この12.38%分を「安全余裕率」といいます。
損益分岐点比率が低い(=安全余裕率が高い)ほど、売上減少時に対して持ちこたえることができます。
すなわち経営体質が強いお店と言えます。
損益分岐点を下げるには
売上高が変わらないと仮定した場合・・・
損益分岐点を下げるには、固定費を下げることと、店長可能経費である変動費を出来るだけ抑えることが必要です。
練習問題
実際に簡単な計算を行いながら損益分岐点売上高を求めていきましょう。
問題
洋食店Aは、ハンバーグ定食1,000円のみを販売しています。
月間平均の損益計算書は以下の通りです。
売上高:300万円
家賃:25万円
材料費:100万円
人件費:110万円(社員30万円,PA80万円)
諸経費:30万円
減価償却費:25万円
利益:20万円
*諸経費:経費のうち材料費・人件費・物件費以外のものを指し、光熱費や消耗品代や衛生費などのこと
①A店の損益分岐点はいくらでしょうか。
②また、限界利益はいくらでしょうか。
③客単価が1,000円として、何人のお客さまが来店すれば黒字になるでしょうか。
解答
まずは固定費と変動費に仕分けします。
固定費 = 家賃 + 社員給与 + 諸経費 + 減価償却費
=25万円 + 30万円 + 30万円 + 25万円
=110万円
変動費 = 材料費 + PA給与
= 100万円 + 80万円
= 180万円
これを損益分岐点売上高を求める公式に当てはめると
①損益分岐点売上高
= 固定費 ÷(1-(変動費 ÷ 売上高 ))
= 110万円 ÷ (1-(180万円 ÷ 300万円))
= 110万円 ÷ 0.4
= 2,750,000円
②限界利益
= 売上高 - 変動費
= 300万円 - 180万円
= 120万円
損益分岐点売上高を2,750,000円とすると・・・
客単価が1,000円なので
③黒字になる客数 =(2,750,000円 ÷ 1,000円)+ 1人
= 2,751人
応用問題
ちょっと難問ですが・・・
損益分岐点の理解を深めるために応用問題に取り組んでみましょう。
問題
①上述した洋食店Aは毎週火曜日が定休になっており今月の営業日は25日間です。
洋食店Aは1日何個のハンバーグ定食を売れば採算が取れてくるかを求めてください。
②洋食店Aは仕入れ原料の高騰と、採用難からパート・アルバイトの時給を上げることを検討しています。
ハンバーグ定食の価格は据え置いたままとして、ハンバーグ1個あたりの原価が2%アップ、時給が30円アップとなったとしたときに、損益分岐点売上高はいくらになるでしょうか。
*1円以下は切り捨ててください。
*パート・アルバイトの月間労働時間は800時間とします。
解答
①採算のとれる販売数
= 損益分岐点売上高 ÷ ハンバーグ定食の値段 ÷ 営業日
= 2,750,000円 ÷ 1,000円 ÷ 25日
= 110食分
②まず、変動費の増加分を求めます。
材料費の増加分
= 1,000,000円 × 1.02
= 1,020,000円
P/A給与の増加分
= 800時間 × 30円
= 24,000円
変動費
= 1,020,000円 + 824,000円
= 1,844,000円
変動費率
= 1,844,000円 ÷ 3,000,000円
≒ 0.614
損益分岐点売上
= 固定費 ÷(1 - 変動費率)
= 1,100,000円 ÷ (1 - 0.614)
≒ 2,849,740円
まとめ
今回は損益分岐点売上が何かについての説明をさせていただきました。
- 損益分岐点とはなにか
- 固定費と変動費の違い
- 損益分岐点売上高を求める公式
- 限界利益とは
- 損益分岐点客数の求めかた
- 損益分岐点比率と安全余裕率の意味するもの
ビジネスモデルがどうあるべきかを議論するうえで、損益分岐点を分析しないということは目をつぶって戦いに挑むようなものです。


